*鳥獣戯画のうさぎ(高山寺) [アートなうさぎ]
京都で「うさぎアート」といえば、まずこれ。
日本人なら、だれもがどこかで目にしたこと
のある、高山寺の国宝「鳥獣戯画」ですね。
写真(右上)は同寺拝観のさい、いただいた
栞です。このうさぎと蛙と猿をメインキャラ
クターに、狐、鹿など、さまざまな動物たち
が遊び戯れるさまを生き生きと描いた絵巻。日本最古のストーリー漫画ともいわれています。うさぎは貴族を、蛙は僧侶を象徴する風刺画という説もありますが、むずかしい話はぬきにしても、見ていると自然に動物たちの世界に入りこんでしまうようで、だれもが純粋に楽しめる、そんな魅力があふれています。
とりわけ感心するのは、動物たちの描写力。動きや身体の表情は人間にしか見えないくらい擬人化されているのに、それぞれの動物は、とてもリアルに特徴が表現されています。
たとえばうさぎなら、手脚のかんじや背中のまるさ、顔かたちはもちろん、しっぽのかたちまで(写真右下参照)。うさぎのしっぽは、よくイラストに描かれるような「まるいしっぽ」ではないのです。全身が白く
耳の先だけ黒いのは、野うさぎの冬毛の特徴です。
うさぎを本当に見て知っている人がきちんと描いているなあと、
うさぎ好きにはうれしくなってしまう絵です。
この作者は、どうしてこんなに動物をよく知っているんだろう。
そしてなぜこんな幻想的な物語絵巻を、じっさいに見ながら写生
でもしたかのように描けるのだろうと不思議だったのですが、数
年前高山寺を訪れてみて、その謎が解けた気がしました。
季節は秋の終わりでしたが、紅葉の名所・高雄からそう遠くない奥山にあるこの古刹は、まるで別世界のように森閑としていました。林の中を抜けていく石段の参道は、脇から野うさぎが跳ね出てきてもおかしくないようす。鳥獣戯画(の複製)が展示されている石水院で、縁側に座って庭を眺めると、静けさのなかで、秋草を揺らす風の音が聞こえます。じっと眺めていると、秋草の間に、僧衣をまとって座る狐や猿、酒宴の肴を運ぶうさぎたちの姿が見えてきそうな気がするのです。
ああここでなら、あの物語絵が生まれてもおかしくはない。そういう場所でした。
この鳥獣戯画、正式には「鳥獣人物戯画」といい、平安末期の高僧、鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)の作ではないかといわれていますが、さだかではありません。甲乙丙丁の4巻からなり、ここで紹介したうさぎや蛙の物語は甲巻に描かれています。現在この甲巻と丁巻は東京国立博物館に、乙・丙巻は京都国立博物館に保管されています。
【記事の参考にさせていただいた資料】
・『NHK国宝への旅9』NHK取材班著、日本放送出版協会発行(S62.12. 第1刷)
・『年表日本漫画史』清水勲著、臨川書店発行(H19.6.1. 第1刷)
・『栂尾山 高山寺』拝観用リーフレットと栞
(!)このサイトの企画および、画像・文章などのデータは、森うさぎの著作物です。
無断転用は禁止します。必ず事前にお問い合わせください。
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日本人なら、だれもがどこかで目にしたこと
のある、高山寺の国宝「鳥獣戯画」ですね。
写真(右上)は同寺拝観のさい、いただいた
栞です。このうさぎと蛙と猿をメインキャラ
クターに、狐、鹿など、さまざまな動物たち
が遊び戯れるさまを生き生きと描いた絵巻。日本最古のストーリー漫画ともいわれています。うさぎは貴族を、蛙は僧侶を象徴する風刺画という説もありますが、むずかしい話はぬきにしても、見ていると自然に動物たちの世界に入りこんでしまうようで、だれもが純粋に楽しめる、そんな魅力があふれています。
とりわけ感心するのは、動物たちの描写力。動きや身体の表情は人間にしか見えないくらい擬人化されているのに、それぞれの動物は、とてもリアルに特徴が表現されています。
たとえばうさぎなら、手脚のかんじや背中のまるさ、顔かたちはもちろん、しっぽのかたちまで(写真右下参照)。うさぎのしっぽは、よくイラストに描かれるような「まるいしっぽ」ではないのです。全身が白く
耳の先だけ黒いのは、野うさぎの冬毛の特徴です。
うさぎを本当に見て知っている人がきちんと描いているなあと、
うさぎ好きにはうれしくなってしまう絵です。
この作者は、どうしてこんなに動物をよく知っているんだろう。
そしてなぜこんな幻想的な物語絵巻を、じっさいに見ながら写生
でもしたかのように描けるのだろうと不思議だったのですが、数
年前高山寺を訪れてみて、その謎が解けた気がしました。
季節は秋の終わりでしたが、紅葉の名所・高雄からそう遠くない奥山にあるこの古刹は、まるで別世界のように森閑としていました。林の中を抜けていく石段の参道は、脇から野うさぎが跳ね出てきてもおかしくないようす。鳥獣戯画(の複製)が展示されている石水院で、縁側に座って庭を眺めると、静けさのなかで、秋草を揺らす風の音が聞こえます。じっと眺めていると、秋草の間に、僧衣をまとって座る狐や猿、酒宴の肴を運ぶうさぎたちの姿が見えてきそうな気がするのです。
ああここでなら、あの物語絵が生まれてもおかしくはない。そういう場所でした。
この鳥獣戯画、正式には「鳥獣人物戯画」といい、平安末期の高僧、鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)の作ではないかといわれていますが、さだかではありません。甲乙丙丁の4巻からなり、ここで紹介したうさぎや蛙の物語は甲巻に描かれています。現在この甲巻と丁巻は東京国立博物館に、乙・丙巻は京都国立博物館に保管されています。
【記事の参考にさせていただいた資料】
・『NHK国宝への旅9』NHK取材班著、日本放送出版協会発行(S62.12. 第1刷)
・『年表日本漫画史』清水勲著、臨川書店発行(H19.6.1. 第1刷)
・『栂尾山 高山寺』拝観用リーフレットと栞
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